「静かな日常の中に、ぽつりと落ちる涙」。そんな情景が似合う物語『波うららかに、めおと日和』。戦争の記憶と共に生きる夫婦の“日和”は、誰の心にもある「癒えない痛み」に、そっと寄り添ってくれます。この記事では、原作漫画の1巻から8巻までのあらすじを中心に、最新刊情報、出版社、そして読者の心を掴んで離さないポイントを、情感たっぷりに解説していきます。
📝 この記事を読むとわかること
- 『波うららかに、めおと日和』1〜8巻のあらすじがざっくりつかめて、読みたくなる気持ちが育つ
- 戦争を背景にした“静かな夫婦の愛”が、どんなふうに描かれているかが感情ごと伝わってくる
- 最新刊の情報や出版社の詳細までチェックできて、次に読む準備がバッチリ整う
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『波うららかに、めおと日和』とは?|作品概要と魅力
作品の基本情報(作者・出版社・ジャンルなど)
作者:西香はちさんは、繊細な心理描写と淡い筆致が魅力の漫画家。日常に潜む感情を丁寧にすくい上げる作風で、特に女性読者からの支持が厚い作家です。
本作は、講談社のWeb漫画サイト「コミックDAYS」で連載中。大正末〜昭和初期の日本を舞台にした恋愛作品でありながら、“戦争と暮らし”という歴史的背景を優しく描く、“静かな時代劇”ともいえるジャンルです。
時代背景と物語のテーマ
舞台は昭和11年(1936年)、帝国海軍の中尉である瀧昌と、良家の令嬢・なつ美の新婚生活から物語は始まります。
まだ“戦争”という言葉が日常の風景には染み込んでいない時代。けれど確かにその影は忍び寄っていて、二人の恋愛や生活の端々に、“これから起こる何か”の予感が滲んでいる。
そんな中で描かれるのは、「今日を大事に生きる」ということ。“夫婦になる”とは、時間を共有することなのか、それとも心を重ねることなのか。本作は、そんな問いに対する小さな答えを、毎話ごとに静かに提示してくれます。
そして何より、この物語には“待つ”という感情の切なさが詰まっている。手紙を書く、料理を作る、ただ無事を祈る――そんな時間が、なぜこんなにも愛おしく、美しく映るのか。答えは、ページをめくるあなたの心の中に、きっと浮かび上がってくるはずです。
原作漫画1巻〜8巻のあらすじ完全ガイド
第1巻あらすじ|“戦争の影”が日常に差し込む
舞台は昭和11年、東京。軍人の父を持つ良家の三女・なつ美のもとに、ある日突然、縁談の話が舞い込みます。お相手は帝国海軍中尉・瀧昌。会ったこともない彼との結婚に、なつ美は不安と緊張で胸をいっぱいにしながらも、一歩を踏み出す決意を固めます。
こうして始まった二人の生活は、まるで知らない人とシェアハウスを始めたかのような、ぎこちなさと初々しさに満ちています。なつ美は家事も経験がなく、瀧昌は女性に対して極度に不器用。それでも、お互いを思いやる気持ちは人一倍。
特に印象的なのは、“ご飯を一緒に食べる”というシーンの重なり。料理を学びながら差し出すおにぎり、朝の味噌汁の湯気、小さな「いただきます」が、少しずつ二人の距離を縮めていきます。
しかし、この幸福な日常にも、少しずつ“影”が差し始めます。戦争が始まる前の“静けさ”。それは嵐の前のように、どこか張り詰めた空気を孕んでいます。
巻のラストで印象に残るのは、なつ美が一人部屋で見上げる夜空と、その瞬間に感じた“誰かのために生きていきたい”という想い。これは、ただの恋愛漫画ではありません。“時代の中で生きる人々”の物語として、読者の心を捉えて離さない一冊です。
第2巻あらすじ|心に沁みる“ふたりごはん”と記憶
第2巻では、“ふたりの関係”がゆっくりと深まっていく過程が、より丁寧に描かれていきます。とはいえ、距離が縮まるということは、すれ違いの回数も増えるということでもあるんですよね。
この巻で特に印象的なのは、“ふたりごはん”の描写。それはただ食べる行為ではなく、“一緒に食卓を囲む”ことそのものが、二人にとっての対話であり、絆の証になっていく。
たとえば、なつ美が頑張って作ったお弁当。瀧昌は無口なまま受け取るけど、その中には「ありがとう」「うれしい」「無事でいるよ」が、全部詰まってるんです。言葉にしない愛情が、毎日の食卓にそっと滲む。
けれど、その一方で巻の後半には、“過去”という見えない壁が立ちはだかります。なつ美が偶然再会した幼なじみとのひととき。それを知った瀧昌が、初めて見せる“嫉妬”という感情。不器用なふたりにとって、それは初めての感情の衝突でもありました。
それでも、最後に二人が見つめ合い、心の奥にある“好き”を確かめ合うシーンは、この巻のハイライト。戦争という時代の中で、「今、あなたと一緒にいる」ことの重みをそっと教えてくれる一冊です。
第3巻あらすじ|遠い昔の“嘘”が再び動き出す
第3巻は、いわばふたりの関係が“本当の夫婦”へと踏み出す巻。それは肉体的な意味だけでなく、心をさらけ出すということの試練でもあります。
ついに迎えた“初夜”の描写は、ただのラブシーンではありません。ここまでの二人のぎこちない歩み、そのすべてが報われる瞬間として描かれています。
でも面白いのは、その翌朝。まるで恋人のように甘い時間が流れるかと思いきや――むしろ照れすぎて、気まずくなっちゃう。ここに、この作品のリアルさと愛おしさが詰まっています。
そしてこの巻のサブテーマが、“昔の嘘”との再会。瀧昌が長期訓練に出る前、なつ美のもとに訪れた過去の影。それは、家族の中に伏せられていた記憶であり、なつ美自身も気づかないまま閉じ込めていた“心のひっかかり”。
人は、本当に信じたい人の前でこそ、「本当のこと」を言えなくなる。この巻には、そんな痛いほどのリアリティが、静かに流れています。
最後のページでなつ美が見せる“強さ”と“やさしさ”は、もう一段、彼女が大人になった証。それはきっと、ただのラブストーリーには収まりきらない、人と人の“つながり”の話として、この物語を広げていく布石でもあるのです。
第4巻あらすじ|すれ違いの中で灯る“希望の火”
第4巻は、“会えない時間”が、二人の関係を試す巻。瀧昌は訓練のため長期間の出航に出ており、なつ美は東京の家で、一人の時間を過ごします。
その静かな日々の中で、「艦が沈んだの」という一言が、なつ美の心をざわつかせる。直接名前が出ていないのに、“まさか”の想像が胸を締めつける。
この巻の魅力は、“待つ”ということの尊さを、なつ美の目線で描ききっているところ。何もできない、ただ無事を祈るしかない。そんな無力さの中でも、彼女は「妻」としてどうあるべきか、自分なりの答えを探していく。
一方で、“再会”という希望の火も描かれます。久しぶりに帰ってきた瀧昌とのひととき。その時間は、言葉よりもまなざし、仕草、沈黙がすべてを語っているような、深い深い安堵に包まれています。
巻の終盤でなつ美が見せる「私は、あの人の妻です」という姿勢には、彼女の内側に育った“覚悟”がにじんでいます。ただ好きだから一緒にいるのではなく、「一緒にいると決めたから、好きでい続ける」。その在り方が、この巻の静かな芯です。
第5巻あらすじ|語られなかった戦中の記憶
第5巻は、瀧昌がなつ美の実家に正式な挨拶に向かうという、物語の中でも“家族”と向き合う大きなターニングポイント。
これまで礼儀正しくも距離を保っていた義理の家族たち――とくに、なつ美の母や姉たちとの対話を通して、“なつ美が育った背景”が静かに浮かび上がってきます。
そして明かされる、瀧昌となつ美が出会う“ずっと前”の物語。ふたりが偶然を装って出会った裏側には、実は家族ぐるみでつながる過去がありました。
この“語られていなかった記憶”は、戦争という時代が家族に残した、見えない傷跡でもあります。言葉にはしなかったけれど、誰かの中でずっと疼いていた想い。それが、この巻ではじんわりと描かれます。
また、姉たちとのやりとりから見えてくるのは、なつ美が“娘”から“妻”へと変わっていく姿。家庭の中で守られる存在だった彼女が、今では夫を支える立場にいる。その成長のギャップが、とても温かく、どこか切ない。
巻の終盤、なつ美の父と瀧昌の“無言の対話”が描かれます。それは、言葉以上に重たい、男同士の信頼の確認。「託す」「受け取る」という行為が、静かに交わされる瞬間です。
第5巻は、“過去と今”、“親と子”、“男と女”が交差する巻。物語がより深く、人間そのものを描き始めた感覚を味わえる一冊です。
第6巻あらすじ|“愛”とはなにかを問いなおす瞬間
第6巻は、ふたりが迎える初めての年越しから幕を開けます。冬の冷たい空気のなかで交わすおせちや年越しそば、初詣の道すがら、手を重ねる瞬間――その一つひとつに、“一緒にいること”の重みが丁寧に描かれます。
この巻では、とくに「愛とは何か」を問いなおす描写が多く散りばめられています。
百貨店デートのエピソードでは、瀧昌が選んだささやかな贈り物が、なつ美にとって“初めての本音”を引き出すきっかけに。贈り物そのものよりも、そこに込められた気持ちに気づいたとき、彼女の中にある「好き」が、また少し輪郭を変えていくのです。
一方で、外からの空気も物語に陰影を与え始めます。戦地から戻った士官の心の傷に触れる場面や、「人を守るって、どういうことだろう」と考える瀧昌の姿から、“愛は感情じゃなく、行動だ”という本質が浮かび上がってきます。
印象的なのは、なつ美がひとりで雪の中を歩くシーン。白い景色の中にぽつんと立つ姿は、“孤独”にも見えるけれど、その胸の内には、「あの人のためにできることを探す」という、確かな意志が宿っています。
第6巻は、言葉で語る愛ではなく、“日々をともにする中で育つ想い”を美しくすくい取った一冊。ふたりの関係が、恋愛から信頼へと、静かに変わっていく様を見届けられます。
『波うららかに、めおと日和』の出版社と最新刊情報
最新刊の発売日・収録話・注目ポイント
2025年5月14日に発売された最新刊・第8巻では、物語が新たな転換点を迎えます。
舞台は昭和12年。歴史の教科書にも登場する「盧溝橋事件」が勃発し、いよいよ日中戦争の気配が色濃くなっていく時代背景の中で、瀧昌の不在が長くなり、なつ美の心は揺れ続けます。
それでも彼女は、「妻として、強くあること」を選びます。「あなたをまた笑顔で抱きしめるために――。」この台詞が象徴するように、なつ美の成長とともに、読者の胸にも確かに何かが残る一冊となっています。
収録話数は7話〜8話程度。巻を追うごとに表紙の色調も落ち着きを増し、まるで二人の“覚悟”が色に宿っているかのようです。
掲載誌・出版社の紹介と関連作品
『波うららかに、めおと日和』は、講談社のWebコミックサービス「コミックDAYS」で連載中。
コミックDAYSは、気鋭の作家による“静かな名作”が数多く揃うプラットフォーム。ほかにも『腸よ鼻よ』『私の息子が異世界転生したっぽい フルver.』などジャンルの幅も広く、感情に刺さる作品を求めている読者にとって、まさに宝庫です。
また、紙版はKCデラックス(講談社コミックス)から刊行。電子版との同時発売で、全国書店やAmazon、各種電子書店で取り扱いがあります。
表紙イラストも人気で、表情や背景の光に“物語の呼吸”が込められているような、繊細なアートワークが話題になっています。
読者が語る“心に残るシーン”と感想
共感を呼んだセリフ・場面ランキング
- 「あなたをまた笑顔で抱きしめるために――。」(第8巻)
- 「艦が沈んだの」(第4巻)
- 「初夜を達成した瀧昌となつ美」(第3巻)
読者のリアルな声(SNS・レビューから)
「初心な二人の新婚生活が微笑ましく、離れて暮らす寂しさやすれ違いの切なさが胸を打ちました。」
「静かでやさしい物語なのに、ページをめくるたび涙が止まらなかった…。」
「戦争の影がじわじわと迫ってくる描写がリアルで、夫婦の小さな幸せがとても大切なものに感じられます。」
まとめ|『波うららかに、めおと日和』はなぜこんなにも“沁みる”のか
この物語は、派手な展開も、大きな事件もありません。それでも読む者の心を静かに震わせるのは、“生きることのかけがえなさ”が、行間にまで染みわたっているから。なつ美と瀧昌が交わす小さな言葉の一つひとつが、愛おしい。
そして、今も世界のどこかで起きている“戦争と家族”の物語に重なるリアルが、この作品を“過去の物語”では終わらせない。
『波うららかに、めおと日和』は、忘れてはいけない“誰かの愛の記憶”を、そっと私たちに手渡してくれる物語です。
📝 運営者の考察
『波うららかに、めおと日和』を読んで感じたのは、「幸せって、戦争みたいに壊れやすいものなんだな」という現実でした。でも同時に、“それでも守りたいもの”があるから人は生きていけるんだとも思ったんです。なつ美と瀧昌の間にあるのは、派手な愛じゃない。日々の中で少しずつ積み重なる、静かで確かな愛。だからこそ読者の心に沁みるし、時代が変わっても色褪せないんですよね。誰かを思い出しながら読んだ人、きっと多いと思います。