地震のあとでのロケ地徹底解説｜釧路・祐天寺の撮影スポットとは？

2025年4月よりNHKで放送されている土曜ドラマ『地震のあとで』は、村上春樹の短編集『神の子どもたちはみな踊る』を原作とした全4話のヒューマンドラマです。

本作では阪神・淡路大震災から30年という節目に、震災が人々に与えた影響と再生を描くことをテーマにしています。

この記事では、『地震のあとで』の物語をより深く楽しむために欠かせない「ロケ地」に注目し、特に第1話の舞台である北海道釧路と、第3話の舞台である東京都祐天寺周辺について詳しく紹介していきます。

第1話「UFOが釧路に降りる」釧路のロケ地を紹介

北海道釧路市は、ドラマ『地震のあとで』の第1話「UFOが釧路に降りる」の舞台として大きな注目を集めています。

1995年の阪神・淡路大震災直後を背景に、主人公・小村が妻の失踪をきっかけに釧路へと旅立つ物語の中で、静寂と再生の象徴として描かれる釧路の風景は、ドラマの世界観と深く呼応しています。

このセクションでは、実際の撮影に使われたロケ地を徹底解説し、それぞれが作品にどのように活かされたのかを紹介します。

釧路駅と幣舞橋：物語の出発点と心の葛藤の場面

釧路駅は、小村が釧路に到着するシーンの撮影場所であり、彼の旅の出発点となる象徴的な場所です。

JR北海道・釧路駅のホームや改札口、そして駅前の風景がドラマでもそのまま使用されており、地方都市の哀愁と孤独感を映像として表現するのに非常に効果的なロケーションです。

幣舞橋（ぬさまいばし）は、釧路の象徴とも言える夕日の名所であり、作中では小村が物思いにふけるシーンで印象的に登場します。

特に冬の釧路は霧が多く、幻想的な風景がドラマの「喪失感」と絶妙にマッチしていると視聴者からも高く評価されています。

フィッシャーマンズワーフMOOと湿原ユートピア：静けさと再生の象徴

港沿いにあるフィッシャーマンズワーフMOOでは、小村が一人で佇むシーンが撮影され、喪失と再生のメタファーとして非常に重要な役割を果たしています。

また、第1話の中で登場人物たちがラーメンを食べるレストランとして登場したのが、「湿原ユートピア」です。

この店舗は、北海道厚岸郡浜中町にある実在のレストランで、地元の味が堪能できる名店としても知られています。

ドラマでは、静かな食事のシーンが心の癒しを象徴するように描かれており、視聴者にも余韻を残す重要な場面のひとつです。

釧路空港とホテルFAMY：小村の旅と出会いのシーン

たんちょう釧路空港も、物語冒頭の旅立ちや、登場人物同士の出会いのシーンで撮影が行われた場所です。

ドラマ内では、小村がこの空港を経由して釧路へと向かう描写があり、旅の始まりとして非常に象徴的に使用されています。

また、ドラマ内で登場人物が滞在するホテルとして登場したのが、HOTEL FAMY（ホテルファミー）703号室です。

このホテルは千葉県千葉市花見川区に実在するラブホテルで、多くの映像作品でも撮影場所として使用されており、ドラマ内でも重要な転換点となるシーンで使用されました。

このように、釧路を中心としたロケ地は、小村の内面を視覚的に映す舞台としてドラマ全体に深みを与えています。

風景の美しさと物語の重厚さが見事に融合したロケーションとなっており、放送後には実際に訪れるファンも増加中です。

ドラマを観た後に釧路を訪れれば、登場人物の足跡をたどるような体験ができることでしょう。

第3話「神の子どもたちはみな踊る」祐天寺エリアのロケ地情報

第3話「神の子どもたちはみな踊る」は、宗教団体で育った青年・善也が、地下鉄サリン事件の記憶を通して自分自身と向き合う重厚なエピソードです。

この回の撮影は、東京都目黒区の祐天寺エリアを中心に行われ、静かな住宅街や地下鉄構内といった「都市の静寂」がドラマの心理描写と絶妙に重なっています。

ここでは、祐天寺周辺のロケ地とその意味合いを詳しくご紹介していきます。

祐天寺駅周辺：宗教団体と静かな町の雰囲気

祐天寺駅周辺は、善也の暮らす町として撮影されました。

祐天寺は閑静な住宅街が広がるエリアでありながら、どこか内省的な雰囲気を持つ街並みが善也の複雑な心情と重なり、印象的な映像美を作り出しています。

撮影では、宗教団体の集会所シーンが駅近くの住宅を活用して行われ、信者役の大規模エキストラ撮影も行われたことが確認されています。

2024年5月12日に祐天寺エリアで宗教団体の信者役としてのエキストラ募集が行われており、地元でも話題となりました。

地下鉄駅構内：事件の記憶と主人公の内面を映す舞台

第3話の中でも特に象徴的なシーンは、東京都内の地下鉄駅構内で撮影された場面です。

具体的な駅名は公開されていませんが、撮影は都内の実際の駅構内またはセットにて再現されたものであり、1995年の地下鉄サリン事件を想起させる構図が、視聴者に緊張感を与えました。

登場人物の善也が地下鉄で「父親かもしれない男」と出会うシーンは、本作の中でも最も重みのある心理描写の一つとして注目されています。

駅構内の構図には、薄暗く無機質な空間と、音のない世界が見事に描かれ、観る者に静かな衝撃を与える場面となっています。

長生郡長柄町：信者役の大規模撮影が行われた場所

宗教団体に関連する別のロケ地として注目されているのが、千葉県長生郡長柄町です。

ここでは、2024年6月14日・15日に信者役として多数のエキストラを動員した撮影が実施されました。

自然豊かなエリアである長柄町では、郊外にある施設を使い、集会や祈祷シーンなどが撮影されたと考えられます。

静寂と宗教的な異空間の対比が際立ち、善也の精神的な揺れを表現する重要なシーンとなっています。

第3話の舞台となった祐天寺とその周辺のロケ地は、都市の喧騒の裏にある静かな葛藤を映し出し、登場人物たちの「心の震災」を象徴する重要な役割を果たしています。

実際に訪れてみると、ドラマの余韻と重なる静かな時間を体感できるでしょう。

その他注目のロケ地とエピソード別の撮影地

ドラマ『地震のあとで』は、各話ごとに異なる地域を舞台とし、それぞれのエピソードに最適なロケーションが選ばれています。

ここでは、前述の釧路・祐天寺以外に、作品全体に彩りを与えたロケ地をエピソード別にご紹介します。

ロケ地は単なる背景ではなく、登場人物の心情を可視化する装置として機能しており、聖地巡礼としての価値も高まっています。

ひたちなか市：第2話の海辺とネットカフェの撮影地

第2話「アイロンのある風景」では、茨城県ひたちなか市の海岸沿いや市内のネットカフェがメインロケ地となりました。

主人公・順子が焚き火を囲んで画家・三宅と心を通わせるシーンは、実際の海岸の流木や波音を活用したリアルな演出が特徴です。

ネットカフェについては、快活CLUBひたちなか店や金太郎6号店などが候補に挙がっており、エキストラ募集も行われていました。

この回は震災の喪失感と“時間の流れ”がテーマであり、ゆったりとした街の空気が情緒的な演出を支えています。

相模原市「ジュピターオーディオ」：第4話での幻想と現実の交差点

第4話「続・かえるくん、東京を救う」では、主人公・片桐が通うオーディオ店として、神奈川県相模原市の「ジュピターオーディオ」が使用されました。

この店舗は実際に存在するヴィンテージオーディオの専門店で、静かな店内の雰囲気と片桐の内面世界がリンクしています。

ここでは、再び現れる「かえるくん」との邂逅や、過去の記憶との再接続が描かれ、幻想的な要素と現実が交錯する重要な舞台となりました。

静けさの中に響くレコードの音が、物語に「静かな希望」のトーンを与えています。

成田市・六本木など：補完カットやクラブシーンも多彩

本作では、メインの物語以外にも、補完的な演出として各地での撮影が行われました。

千葉県成田市では、駅や住宅地を背景にした回想シーンの撮影が確認されています。

また、第3話では、東京都港区六本木のクラブでの撮影も実施され、宗教団体から逸脱した若者たちの現代的な生活背景を対比的に描いています。

都心の繁華街の「まばゆさ」と、地方の「静けさ」が対比される構成は、本作のテーマ“揺れる現実”を強調するものとなっています。

このように『地震のあとで』のロケ地は、物語の舞台として機能するだけでなく、喪失・再生・孤独・希望というテーマを視覚的に伝える大きな役割を担っています。

今後、NHK公式やフィルムコミッションによるロケ地マップや巡礼ツアーの展開も予想され、地域観光にもつながる動きとして注目されるでしょう。

地震のあとでのロケ地を訪れて感じる作品の余韻まとめ

『地震のあとで』は、阪神・淡路大震災や東日本大震災の記憶と向き合う登場人物たちの心の旅を、4つのエピソードに分けて描いたNHK土曜ドラマです。

それぞれの物語は、実在するロケ地を通じて、現実とフィクションの境界を曖昧にするような臨場感を持ち、視聴者に深い余韻を残しました。

ここでは、ドラマの舞台を実際に訪れることで得られる感覚や、ロケ地巡りの意義を考察していきます。

釧路・祐天寺などのロケ地が持つメッセージ性とは？

第1話の舞台・釧路では、霧の街と呼ばれる幻想的な景色が、主人公・小村の喪失と再出発の心情を象徴していました。

幣舞橋や釧路湿原を歩くことで、静けさの中にある心の動きを追体験することができます。

一方、祐天寺や長柄町の宗教施設周辺は、都市の中の静寂として描かれ、現代社会が抱える「心の震災」を鋭く映し出していました。

どのロケ地も、ただの「撮影場所」ではなく、登場人物の心象風景そのものとして機能している点が本作の特長です。

ロケ地巡りの際のマナーと観光のポイント

ドラマの世界を追体験するためにロケ地を訪れる際には、現地の住民や施設への配慮が何より重要です。

例えば、祐天寺や相模原のジュピターオーディオは日常の暮らしの中に存在する場所であり、節度ある行動とマナーが求められます。

また、訪問時は以下のポイントを意識するとより楽しめます：

• 早朝や夕暮れなど、ドラマの印象的な時間帯に訪れる
• 現地の観光案内所で周辺スポットを確認する
• スマホやカメラで静かに撮影し、SNSでは位置情報に注意

特に釧路では、「勝手丼」で有名な和商市場や幣舞橋の夕景など、観光としても楽しめる要素が豊富です。

作品と自分を重ねる“体験型鑑賞”の魅力

ロケ地巡りは単なる観光ではなく、ドラマの世界と自分自身の感情をリンクさせる体験型の鑑賞でもあります。

小村の喪失、順子の再生、善也の内面、片桐の孤独と対話――それぞれの登場人物に感情を重ねながら、その舞台となった場所を歩くことは、深い気づきや癒しをもたらしてくれます。

NHK公式やフィルムコミッションの情報では、今後「ロケ地マップ」や「巡礼ツアー」の実施も検討されており、地域活性化の一環としても注目が集まっています。

『地震のあとで』は、視聴後にその舞台を訪れたくなる、稀有な作品です。

それぞれのロケ地を巡ることで、「震災を知らない世代」も、過去と向き合い、今を見つめ直すきっかけになるかもしれません。